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「そいつはな。オレに惚れてやがる癖に、ずっと黙ってやがったんだ」
「へ、へぇ」
半分くらいになった煙草が、島原の唇の端で燃える赤い光を放っている。これが早く短くなるように、早く火が消えるように願うのは初めてだ。
聞きたく無い。
俺と同じように島原に片想いして、彼を射止めた女の話なんて。
「そいつ、毎日毎日熱い目で見てきやがって。バレバレだってんだ。そのうち告白してくるかと思ってたのに、何も言ってきやがらねぇ」
「え?でも、付き合ってんだろ?」
「付き合ってねぇよ」
「はあー?だって、結婚するって」
「あー、だから。付き合おうぜをすっ飛ばしてプロポーズすんだよ。まどろっこしいから」
「ゲェッ」
し、島原らしいというか何というか。
島原がこう言うからには、絶対に振られない、確実に結婚するって自信があるんだろう。
甘酸っぱいお付き合いの期間をすっ飛ばされるなんて、彼女には少し同情する。
「断られたり、したらどうすんだよ」
「……ハッ、絶対にねぇな」
自信満々の島原は、スーツの内ポケットに手を入れた。そこから、茶封筒を取り出す。
何かな……島原の事だから、興信所にでも彼女の事を調べさせて、その調査結果とか。
まさかな。
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