第1章 愛しき日々  冬

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「捜査一課の活火山」     を 「バカとバカの狭間」     と 呼称してはばからない 山村美月が、 口を開いた。 「どしたバカま。  顔色がよくないぞ」 「縮めるなあ!」 反射的に立ちあがる。 警視庁一の長身は 美月に影を造るほどだが、 痩身のせいか あだ名の山という気はしない。 どちらかといえば柳だ。 空気も場所も読まない美月は 続ける。 「あのな、  先週、お前が出した出張報告書、  全く報告のテイを成してない。  今日中に書き直せ」 「お前っていうなあ!」 「あんな文章力でよく調書が通るな。  小学生の絵日記よりひどいぞ」 「うるさい!  そんなこと言うために  わざわざ総務から来たのかっ!」 「違う。今日の記録係」 「わかってる!」 狭間の席は真ん中の後方よりで 今や数名どころか 全員がこちらを見ている。 「何やってる。始めるぞ」 刑事部長以下数名が参内してきた。 狭間はネクタイを締め直し、 美月は席に戻った。
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