だからわかる

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 まるで不思議なことを言われているかのようにそう彼は語る。  彼の自尊心の高さに、セレンは一瞬呆然としたようだった。  けれどすぐに、 「……だから僕はあなたが嫌いです。自分勝手な貴方が」 「……そんな生意気な口はもう二度と叩けないでしょうから今は見逃して差し上げますよ。ですが……そんな風な口をきいたがために、大事な“お友達”がどのような目にあうか、その目で確かめていただきましょうか」 「! ルカは関係ない!」  セレンが焦ったようにそう僕に言って、そんな僕の目の前にトラのような怪物が現れる。  この魔物はと僕が思っていると、 「この魔物は、炎をつかさどる魔物だ。だから炎への耐性も強くそして風の魔力を操る。その二つの力をもって、普通の冒険者ならばすぐに食い殺されてしまう魔物だ。ああ、“いばら姫”には攻撃しないようにと言ってあるから、抱きしめているお友達が食い殺されていく様をすぐそばで見ているといい。それとも、“お友達”は“いばら姫”を今すぐ見捨てて逃げ出すのも手だね。もしかしたなら逃げ切れるかもしれない」  そう告げたキズヤを、僕は逆に嘲笑う。  それにキズヤはプライドを傷つけられたらしく、 「行け!」  いらだったように魔物に命令を下す。  魔王候補はよく魔物を操れるようになるなと僕は思いながら、手慣れたように、その魔物に耐性のある炎を呼び出し、 「いったい誰に言っていると思っているのかな?」  僕は笑いながら、目の前に現れた魔物を一瞬にして魔法で焼き尽くしたのだった。
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