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目の前に現れてけしかけられた魔物。
それを僕は一瞬にして燃やし尽くした。
この程度の魔物は余裕だと僕は思いながら、驚いたようなキズヤと仲間たちを見て、
「それで、この程度の魔物で僕をどうにか出来るとでも?」
「この……こんな学生がいるなんて聞いていないぞ。上位にはいなかったはずだ!」
キズヤが焦ったようにそう叫んでいるが、そういえば僕、最弱、Fランクだったなと思いだした。
やはり僕の判断は間違っていなかった、こうやって敵を油断させるのに成功した! と、当初の目的を忘れて僕は心の中でドヤァ、とした。
だがそこでキズヤが怒り狂ったように、
「あの魔物は欠陥品だ。もっと呼び寄せろ!」
「しかしキズヤ様、それではこの後の……」
「“宴”か? そんなもの、俺が“魔王”になってしまえばその力でどうとでもなるだろう! それともお前達、俺の寝首をかいて自分が“魔王”になる気か? ……魔王は二人もいらないからな」
キズヤがケタケタケタと不気味な笑い声をあげる。
常人がしないようなその様相も、魔王候補にはよくある特徴だ。
“闇の魔力”に触れると、“正気”を保つのは難しいのかもしれない。
ただ以前、“大切なもの”があったがために、一度だけ魔王候補の一人が元に戻れたこともある。
深入りをまだしていなかったから、という事もあるが……彼のもたらしてくれた情報から、魔王候補と呼ばれる者たちの情報がこちらにそこそこ流れたことがあったとふと思い出す。
けれどそういった“大切なもの”があることがまず魔王候補にしては珍しいのだ。
このキズヤを見てわかるだろう。
彼は……誰でもいいのだ。
“使える道具のような人間”さえいれば。
その冷酷さが彼自身を傷つけることになるとは思っていないのだろうと僕は思う。
そこで再び先ほどの魔物が再び五匹ほど現れる。
学習能力がないと僕は嘆息した。
するとセレンが、
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