876人が本棚に入れています
本棚に追加
「なんだ、もう一人子供が増えたぞ」
「彼が何かやったのでは? ……ですが可愛い子供が二人に増えたのは、都合がいいですね」
気づけば僕達のすぐそばに二人の大人が立っていた。
元々いたけれど僕が気付かなかっただけなのかもしれない。
そこで大人の一人が、
「では始めましょうか。この子供達の血によって、私達が本物の“魔王”となるのです!」
物騒な事を、と僕が思っているとそこで、もう一人の大人が大きな鎌のようなものを取り出した。
陽の光に銀色に輝くそれに、僕は凍り付く。と、
「おい、こっちの子供は、魔力封じはしなくていいのか?」
「別にかまわないでしょう。この子供からは、魔力も何も感じませんから。ただの子供……けれど生贄には都合がいいですね」
不気味に笑う子の大人達に、僕は誰か助けを呼ぶべきだと思った。
だから僕はすぐそばにいた綺麗な子の手を握りしめて、その場所から逃げようとした。
けれど、彼の手を引っ張るとすぐに、ちゃりっと、金属がこすれる音がする。
音のした方を見ると、この綺麗な少年の足には金属の鎖が巻き付けられて赤く腫れていた。
少年が逃げられないように拘束していたのだ。
僕はその鎖を何とかして解こうと思う。と、
「き、君だけでも逃げなよ」
「でも……」
その時僕は、この子を助けたいと思った。
後から考えればこの大人達からは僕だけが逃げてもすぐに捕えられてしまっていただろう。
もしそうならば、その後に僕が運よく助かったとしても、僕は、それからずっと、その子を助けられずに後悔しただろう。
最初のコメントを投稿しよう!