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お店の二階に住んでいるわたし達は帰宅後、
下の階へ降りてカレーの準備をした。
海の家をやってる間も、父母やバイトの子達でカフェも営業している。
けれど、今日は定休日なので人はなく、店内はとても静かだ。
常に仕込んであるカレー鍋を確認し、火をつけて温めている間、勇輝はテレビをつけて見始めた。
もっぱらアニメばかり見る勇輝のおかげで、ずいぶん最近のアニメ事情に詳しくなったものだ。
テレビに釘付けになっている勇輝の横顔を見つめると
ドキッとするほど航輝さんと眼差しが似ている。
忘れられるわけないな、やっぱり。
そう思ってため息を吐きながらスプーンやお皿を出していると
カランカラン、とドアベルが鳴った。
CLOSEDの看板してなかったっけ?と訝しげにドアの方を見て、「今日は定休日なので」と声をかけようとしたその人がこちらを見た瞬間、ドキリと心臓が跳ねた。
ーーーーどうして。
記憶より少し年は取っているけれど、優しげに微笑む彼の涼しげな眼差し。
彼がいなくなっても、毎日勇輝のそれを見てきたわたしが見間違えるはずない。
幾度となく夢で見た光景が今、目の前にある。
なのに、どういうわけか怖くて仕方がなかった。
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