帰りたい場所【side 航輝】

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帰りたい場所【side 航輝】

交通事故に遭ってから、ずっと頭に靄がかかったような、そんな状態だった。 意識不明の重体に陥ってた後遺症か、どうやら僕には記憶がなくなってる部分があるらしい。 医者からは、焦ることはないと諭されたが、やはりあったはずの記憶がないというのは本人にはかなり気持ち悪いものだ。 周りの人間も、思い出さなくたって大丈夫、また1から積み上げればいいから、とフォローをしてくれた。 が、仕事の話はともかく、プライベートに関してはみんな何も教えてくれない。 僕自身が開けっ広げなタイプではないから、致し方ないのかもしれない。 仕事の仲間で、唯一プライベートなことも少しは喋ってきた堤(つつみ)までも何も語ろうとしないのだから 本当に僕の記憶の手掛かりは皆無に等しかった。 そもそも、元々仕事ばかりしていて息のつく暇もあまりない日々だったはずだから、たいした出来事もなかったろう。 そう、無理矢理自分に言い聞かせて 周りにも、気にしてないよ、と振る舞った。
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