帰りたい場所【side 航輝】

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僕が記憶の手掛かりを捜してることは堤もわかっていたはずだ。 知っていたのに今まで隠していたってことは それなりの理由があるのだろうと思うが、僕に黙ってなきゃいけないことなんてそうそうない。 僕に言うことが堤にとって、もしくは会社にとって不利な状況に陥らない限り。 「……父絡み、か」 直感でそう思った。 僕の父は、会社のためなら手段を選ばない非情な面を持っている。 それが大企業のトップたる所以だ。 ついていけない者も多いが。 「…………悪いな」 否定も肯定もせず、堤はそう呟いた。 おそらく父に口止めでもされてるのだろう。 いくら僕の部下とはいえ、社長から言われたら逆らえない。堤だってサラリーマンだ。 「わかった。 とりあえずその別荘に行ってみる。 …….少しでも話してくれて助かった」 堤が与えてくれた小さなヒントを頼りに、僕はその数日後、別荘へ向かった。
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