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ここには毎年のように訪れていたが、ここ数年は来ていなかったはずだ。
なのに、扉を開けて中へ入ると
懐かしいのは懐かしいのだが、妙に生活感が出ているような感じに包まれる。
堤が言ってたことは本当だったってことか。
ここを住居代わりに使用していたのだろう。
リビングにまで足を踏み込むと、なぜか胸がやたらと騒ぎ出した。
ドクンドクン、と鼓動がやけに大きく耳に鳴り響く。
ーーーーなんだ?
この得体の知れない緊張感は。
じわっと汗が額に浮かんできた。
少し落ち着こうと近くにあったソファに腰を降ろした。
背もたれに頭を預けながら、瞳を閉じる。
静かなはずのこの空間で聴こえてきたのは、少し離れた海からの寄せては返す波の音。
ーーーーそして。
僕と誰かの楽しそうな高い笑い声、だった。
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