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「クソッ……」
なんでそんなに大切なものが思い出せないんだ。
やりきれない想いを感じながら腕を顔の上に置いて深い息を吐いた。
誰なんだ、あれは。
少なくとも早穂さんではない。他に事故前からやりとりのある女性なんて……
考え始めたところでまたズキンと頭が痛む。
ーーーー駄目だ。
ソファに崩れ落ちるように横になりながら、意識が遠のいていくのを感じる。
遠い記憶の中なのだろうか。
波打ち際で彼女を抱きしめた時の映像が過ぎる。
しかし、僕はそこで意識を手放した。
**********
目を覚ますと、向かいのソファに堤がいた。
ぼんやりした頭で、「あれ」と呟くと
「目覚めたか。
気を失ってたみたいだな、気分はどうだ?」
「……良くはない」
頭痛は治まっていたが、倦怠感が全身を包んでいた。
「何か思い出してどんな行動に出るか急に心配になったから来てみたんだが……グッタリしてて焦ったぞ」
「悪い」
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