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はぁ、と堤は困ったように嘆息を吐きながら僕をじっと見つめた。
「まぁ、いいけどな。気が済むようにしたらいい。
でも……きっと辛いだけだ」
堤の言葉に目を見張った。
仕事に徹しろと言った奴が、これまでにないほど苦しそうな顔をしていた。
僕のことを案じてくれているにしても、
どうして堤がそんなに辛そうにしているのか。
まるで僕の代わりに痛みを受けたかのようだ。
なら、やはり僕は知るべきだと思う。
きっと苦しめてるのは父なんだから。
「すまない」
「……椎名が謝ることはない」
首を横に振って力なく笑う。
その堤の姿を見て、僕は心を決めた。
こんなふうに、父と僕の板挟みになって悩まなくてもすむように、行くべき道は1つだ。
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