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僕には関係のない人だろうと思いながらも
なぜかその書類から目が離せなくなった。
僕の様子に気付いた父が、書類を取り上げてパラパラめくる。
「お前が付き合っていたらしい相手だが、もう見る必要はないな」
バサっとその書類を父が近くのゴミ箱に投げ入れた瞬間
ドクン、と心臓が派手に脈打つのを感じた。
「忘れたままでいれば余計な感情に揺さぶられることもなかったのに」
薄い笑みを貼り付けた父の顔を殴りつけたい衝動に駆られる。
余計な感情?
僕にとってはきっと、なくてはならないものだったんだ。
失ってはいけないものだったんだ。
それを事故で失くした上に、勝手に土足で踏みにじられた。
「……父さんには不要なものなんでしょうね。
そうやって次々に切り捨てたものから、いつかしっぺ返しが来ますよ」
そう言い捨て、僕の記憶のヒントとなるその調書も拾い上げずに部屋を出た。
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