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どうせあの調書には表面的なことしか書かれていないだろうし、見たところで記憶が戻るとも思えない。
大事なことは、自分で掴まなきゃ意味がないんだ。
僕の記憶を取り返す前に、やるべきことが出来た。
堤の言うとおりだった。
父を……追い落とさないと駄目だ。
憎しみが憎しみを呼んで、いつか会社が潰されてしまう時が来る。
そうなる前に、一刻も早く。
ーーーー社長の座を退いてもらう他ない。
それから僕は、大事な心のカケラを失ったまま、
仕事に埋没される日々を送った。
時折、どうしようもなく胸が苦しくなる時があっても
もう今更取り戻したところで何もかも遅いということは理解していても
望みは捨てなかった。捨てきれなかった。
本当に必要なら、この手に戻ってくるはずだと信じて。
一瞬脳裏に浮かんでは消える彼女との甘い日々を僕は無理矢理、胸の奥にしまい込んだまま年月が流れていった。
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