542人が本棚に入れています
本棚に追加
*****
そして8年近く経った頃、水面下で様々な画策をしながら、ようやく父を社長の座から引きずり下ろし、僕自身が代表取締役に就任した。
社長室の椅子に腰掛けながら窓の外を眺める。
横には堤がいた。
「長かったな、ここまで」
「堤には本当によくやってもらった。感謝してる」
「よせ。椎名の手腕がものを言った結果だ」
こういうのを戦友とでもいうんだろうか。
危機を何度も互いに助け合って乗り越えて来た。
「椎名、お前……もう吹っ切れたのか?」
徐に堤が躊躇いながら口を開く。
「何が?」
「何がって……8年前のことだよ」
父を追い落とすために堤に協力を仰いだ時、記憶のことは諦めたと、そう言った。
諦めたわけではなかったが、堤に妙な責任を感じて欲しくなかったからだ。
最初のコメントを投稿しよう!