帰りたい場所【side 航輝】

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***** そして8年近く経った頃、水面下で様々な画策をしながら、ようやく父を社長の座から引きずり下ろし、僕自身が代表取締役に就任した。 社長室の椅子に腰掛けながら窓の外を眺める。 横には堤がいた。 「長かったな、ここまで」 「堤には本当によくやってもらった。感謝してる」 「よせ。椎名の手腕がものを言った結果だ」 こういうのを戦友とでもいうんだろうか。 危機を何度も互いに助け合って乗り越えて来た。 「椎名、お前……もう吹っ切れたのか?」 徐に堤が躊躇いながら口を開く。 「何が?」 「何がって……8年前のことだよ」 父を追い落とすために堤に協力を仰いだ時、記憶のことは諦めたと、そう言った。 諦めたわけではなかったが、堤に妙な責任を感じて欲しくなかったからだ。
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