潮騒が聴こえる

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そして8月最後の日。 海の家をやってるみんなと打ち上げをして、花火が始まっても彼はやって来なかった。 遊びに来ていた陸が花火をわたしに手渡してくれても 彼が来るまで待っていたくて ただ、みんなが盛り上がってるのを砂浜に座って遠目に眺めていた。 ザザァン、と波が浜辺に打ち寄せては帰っていく音と 花火のけたたましい音が混ざり合うのを聴きながら まるで振られた気分になって、虚しくて 手元の砂をギュッと掴んでいると 頭上から「おい」と聞き慣れた声がする。 振り返ると、そこにいたのは陸だった。 「機嫌わりーじゃん。どうした?」 「別に」 「待ち人来ず、か?」 けけけ、とバカにしたように笑う陸にムカついて ギロッと睨む。 「俺に当たるなよ。 カレーがないんじゃ、来ないかもな?あの人カレー目当てで通ってたわけだろ?」 海の家にしょっちゅう通うインテリ男性なんてあまりお目にかからないため、わたしの仲間内ではすっかり彼は有名人だった。 ついでにわたしが彼に惹かれてることも。 「……やっぱ彼みたいな人は、清楚なお嬢様系が好みなのかなぁ」
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