帰りたい場所【side 航輝】

36/37
前へ
/76ページ
次へ
凪沙の濡れる瞳の中に答えを探すように視線を絡めていると 彼女は徐に微笑んで口を開いた。 「おかえり」 全てを包み込んでくれるかのような、クシャッと笑うその顔に胸が突かれて、じわりと何かが溢れそうになる。 もう二度とこの手を離したりはしない。 僕の帰りたい場所は、ここしかないから。 「……ただいま」 何でもないこのやり取りが、僕たちには長い長い間、出来なかった。 こんな普通のことが幸せだなんて、昔なら考えられなかっただろう。 凪沙の頬に手をそっと添えて、その感触を確かめながら 僕は彼女に熱く深く唇を重ねた。 今まで離れていた分、辛い思いをさせてきた分。 一生をかけて 僕は君を愛し続ける。 ~fin.~
/76ページ

最初のコメントを投稿しよう!

544人が本棚に入れています
本棚に追加