序章~第1章 復讐へのプロローグ

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序章~第1章 復讐へのプロローグ

「私は橋だった。冷たく硬直して深い谷にかかっていた。こちらの端につま先を、向こうの端に両手を突き立てて、ぼろぼろ崩れていく土にしがみついていた。風にあおられ裾がはためく。下ではマスの棲む渓谷がとどろいていた。こんな山奥に、はたして誰が迷い込んでくるだろう。私はまだ地図にも記されていない橋なのだ――だから待っていた。待つ以外に何ができる。一度かけられたら最後、落下することなしには橋はどこまでも橋でしかない。」 フランツ・カフカ「橋」より この物語は私の友人の体験談をもとに書き下ろしたものである。とはいえ、どこまでが真実でどこまでが虚構であるのかは私には判断はつきかねる。当然、この物語が小説である以上、ところどころ脚色は施してあるし、100パーセント友人の体験談そのままというわけでもない。 しかし、真実であるか虚構であるか判断がつきかねる本当の理由は、友人の人となりにあった。     
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