序章~第1章 復讐へのプロローグ

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友人はとある量販店に勤めるいちサラリーマンにすぎなかった。彼は40代半ばまで、人並みにサラリーマン人生を歩んできたが、ある日突然、会社のトラブルに巻き込まれ閑職に回された。彼はそれでも同じ会社で仕事を続け、定年まで勤め上げている。 しかし、彼に言わせれば、「解雇されたも同然だ」ということらしい。いや、彼は同じ会社で定年まで働いていながらも、自身は解雇されたものと思っていたらしい。彼のその時の精神状態を分析するのは難しいが、彼は異常な精神状態のもと、定年までのサラリーマン人生を送っていたといえる。 想像力豊かであった彼はサラリーマンをしながら、小説を書くのが趣味だったらしい。しかし、閑職に回されたショックで精神に異常をきたしてしまってからは文章を書くことはままならず、想像は妄想に形を変えていった。 定年後、気持ちが随分と落ち着いた彼は、自分がサラリーマン時代に経験してきたことを、ポツリポツリと私に話をしてくれるようになった。理路整然とした友人の話ぶりは、とても精神に異常をきたしている者とは思えなかった。しかし、おそらくは、彼の話の何割かは彼の妄想が生み出した虚構であると思っている。     
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