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綾小路先輩が飛び出して行った後の教室は水を打ったように静かだった。 「ねぇ、ほんとにあの、柊木先輩と付き合ってるのかな?・・」 「・・柊木先輩って羨しい過ぎない?」 「柊木先輩が特定の子と付き合うなんて信じられない」 あたしの言った嘘で教室の、あっちこっちからヒソヒソと女子の噂話しが聞こえてきた。 慌てて・・乙夜と恭丞があたしを教室から連れ出した。 誰もいない階段の踊り場へ連れてかれた・・・明日香も呼ばれた。 「梨蘭、なんで柊木先輩の名前、出したんだ?」 乙夜が怒ったような顔で聞いた。 「え?だって、でたらめだよ?ほんとにそんな名前の人いるの?」 「「「・・・・・」」」 三人の顔がみるみる・・・真っ青になった。 「どうしたの?その名前・・そんなにまずかった?」 「ハァ~?ほんとに梨蘭ちゃん 覚えて無いの?この学校じゃ一番出したら不味い名前だよ!」 「あたしも会ったこと無いんだけど、女子の噂だと凄いイケメンで目をみただけで妊娠しちゃうとか、凄い、たらしみ―――」 目をみただけで・・・妊娠?たらし・・って何? 「コホン!・・明日香!」 乙夜がなぜか・・・明日香に目くばせした。 「あ、ごめん・・と、とにかく悪いヤツてことだよ」 乙夜の目くばせの後、明日香は急に話題を変えた。 乙夜たちの話しからして・・・どうやら・・あたしがでたらめで言った名前は相当まずい人物の名前だったらしい。 とは、言っても名前を勘違いしてフルネ―ムで言ったのは綾小路先輩だ。 あたしは乙夜たちが言う人物のことなんて知りもしないのだから・・・気にする必要はないような気がした。 乙哉や恭丞たちがなにをそんなに心配してるのか全くわからなかった。 あたしはこの時、裏庭でみた根性悪の強面の男のことなんて思い出しもしなかった。
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