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第一話
荒良木 菖蒲(あららぎ あやめ)は昔から、他の人には視えない、聞こえないものが、視えたり聞こえたりしていた。
菖蒲が視えている者は、見てくれは、恐ろしげではあるものの、大抵は道を聞かれたり、○○は知っているか?と聞かれたりするぐらいで、実害は皆無。
菖蒲を恐れている者もいて、本人は気がつかない力があるのかもしれない。
それもあってか助けてもらう事が、多いようにも思う。
実際に予言めいた事を言われ、その通りになった事が何度もある。
彼らは、祖父母が事故で死ぬ事を、菖蒲に教えたのだが、菖蒲は祖父母にその事を言えなかった。
祖父母は、不思議なものを視たり、聞いたりする事を信じてはいなかったし、何よりその話題が大嫌いだったからだ。
菖蒲には、ごく普通の女の子として育って欲しい。その思いが強かったのかもしれないが、菖蒲の不思議なものを見聞きする能力に対する否定は、菖蒲が苦しむには十分だった。
そして、彼らの予言通り、祖父母は事故で亡くなった。
亡くなった後、菖蒲は祖父母の遺産を受け継ぎ、そのまま祖父母の家に一人で暮らすことになった。
両親は幼い時に、菖蒲を祖父母に預けたまま、会いにくることも、連絡を寄越すこともなく、祖父母の葬儀にすら現れることはなかった。
遺品整理をしている時に、古いカセドラル型ラジオを見つけた。
苦心惨憺して、やっとこ直したラジオは、不可思議な放送局以外流れる事はなかった。
だが、菖蒲はそのラジオ番組が好きで、毎日欠かさず聴いている。
「本日もやってまいりました。
魔界ラヂヲ放送局、今日も悪役のお時間です。
では、最初のコーナー参りましょう。
今日も悪役、お馴染みの「愚痴って銅像」本日お一人目はー…
「小悪魔ベティさん」
最近の人間たちの死ぬ死ぬ詐欺、如何にかなりませんかね。この間、死にたい。死にたい。喚いてたんで、サクッと魂回収するんで待ってたら、全然死んでくれないんですよ!気が付いたら三ヶ月ぐらい経過してるし、お陰でゲームクリアできたんですけど、なんか結婚しちゃうしホント無駄足でした。
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