1.仲直りはいつの日か

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 最寄りの商店街に入ると、肌寒い風は少し収まり、暖かい空気が私を包んだ。幼い頃は賑わっていたこの通りも、今ではシャッターが立ち並び、ひっそりとした気配を漂わせている。まるで私の心の中みたいだ、とそんなことを思って、また気持ちが暗くなる。  見慣れた駄菓子屋さんの前を通り過ぎるときも、胸がずきずきと痛んだ。何年経っても変わらず開いているこのお店に、私はいつも小銭をにぎりしめてお菓子を買いに来ていた。そのときは必ず、奈津も一緒だった。  どうして、こんなことになっちゃったんだろう。  さらに少し進むと、これまたいつものボロ屋が目に入る。私が生まれた時から誰も住んでいなくて、壊されも直されもしない小さな家。商店街の隅っこにこじんまりと建っているツタが絡まり放題のそれは、ともすればお化け屋敷のようだった。  その入口の扉に、見慣れない小さな看板がぶら下がっている。不思議に思って近づいてみると、そこにはこう書いてあった。 『時間屋』  なんだろうこれは。誰かのいたずらだろうか。よく見ると、小さな字が付け加えてある。 『もし、過去に戻れるとしたら、あなたは何をしますか?』     
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