1.仲直りはいつの日か

5/20
前へ
/172ページ
次へ
 背丈は小学校低学年くらい。銀というより白に近い綺麗な髪と青い瞳は、日本人のそれではない。その口から日本語が出るのはちょっと不自然だ。服は、大人が着るような洋風の洒落たもので、一見不釣り合いな、外国製の人形のような姿だった。  部屋の奥のコート掛けには彼のものであろうシルクハットがかかっていて、机の横の止まり木には、不気味な黒い九官鳥が居座っている。そのぎょろりとした目と視線がぶつかって、私は肩をすくめた。 「……ここはいったい何? あなたは誰?」  私の戸惑いながらの質問に、少年はすらすらと答える。 「ここは時間屋。お客の時間を巻き戻したり進めたりして、過去や未来へいざなうのが僕の仕事。ここの商品はあなたの『時間』……言い換えれば思い出や将来といったものだ。僕はいわゆる、時空旅行人(タイム・トラベラー)って呼ばれるたぐいのものさ。決められた時間の中で生きて、死んでいく君たちとは違って、さまざまな時代の中を飛びまわることのできる不死身の存在、って感じかな」  映画のセリフのように少年はぺらぺら喋った。  あまりに現実離れしていて、それでいておとぎ話のような彼の語り口に、驚くというよりは呆れてしまった。『タイム・トラベラー』だって。この男の子は大人をからかって遊んでいるのだろうか。こんなおんぼろ屋敷にわざわざ『お店』まで構えて。私は少しいらだちを交えた口調で問い詰める。     
/172ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加