1.仲直りはいつの日か

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「えーっと……私をからかってるの? これは何かの遊び? なんなの? 『時間屋』って」 「にわかには信じられないかもしれないけど、僕がさっき話したのは本当のことだよ。もちろん、からかってなんかいないさ。僕らは気まぐれに、いろんな場所でこの『時間屋』をやっている。ちょうど三日前、この時代の二百年くらい前からタイムスリップしてきて、このニッポンで店を構え始めたんだ。あ、そうそう、僕の相方を紹介するよ」  少年――――時間屋は、隣の九官鳥を手で指し示す。そいつが嘴を開いた、と思った瞬間。 「はじめまして、お客様。私は店主である旦那様の『案内役』の、ハルと申します。以後、お見知りおきを」  驚いて言葉も出ない。落ち着いた、女性のような声だった。九官鳥が人の言葉をしゃべれるのは知っていたが、こんなにも流暢に、そして人の真似ではなくまるで鳥自体が人間と同じ意思を持っているかのように話すところはみたことがなかった。 「ハルは僕が旅を始める前から一緒にいて、いろんなところで僕をサポートしてくれるんだ」  私は夢の中にでもいるのではないのだろうかという思いがしてきて、一人つぶやく。 「……変なの。そんな話、信じられない」     
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