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「お客様が信じられないのも無理はございません。旦那様、ここは一つ、たとえをあげてみてはいかがでしょうか」
「それもそうだ。じゃあまず、君の名前を教えて?」
唐突に時間屋は私の名前を尋ねた。
「彩花、だけど」
「アヤカね。例えば……アヤカは、あるときテストで100点満点中2点を取ったとする」
「低っ!」
いくらなんでもそんな点数はとったことがない。
「そこで、そのテストの勉強をちゃんとしてからこの店に来て、『過去』、つまりテストが始まる前へとタイムスリップする。そこで、テスト前の勉強してないアヤカと入れ替わるんだ。そうすれば、勉強してきたからすらすらテストが解けて点数が良くなる。現在に戻ってきた時、あなたの前には2点じゃなくて100点のテストが置いてあるわけ」
そんなに現実味のある説明されても、と困惑する。これじゃあまるで小説の中のおはなしだ。
「ああちなみに、タイムスリップの方法だけどね、これを使うんだ」
そう言って時間屋が目の前に差し出したのは、金色の懐中時計。普通の時計より文字盤と針の数が多い。手に取るとずっしりと重みがあり、キラキラと光る金色の鎖やたくさんの小さな傷が、ただの時計ではないことを物語っている。
「ううーんでも、タイムスリップなんて、ちょっと信じられないなあ……」
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