22人が本棚に入れています
本棚に追加
「僕が嘘つきだとでも思ってるの!? ひどいなあ、まったくもう!」
憤慨する男の子に、私は困り果てた。「サンタクロースはいる」と熱弁されるのと同じである。
過去にタイムスリップ。もしそれができるのなら、私は何がしたいだろうか。
ふいに、帰り道に目の前を横切っていった奈津の姿が瞼の裏に浮かんだ。
もし、過去に戻れるのなら。私は、奈津に――――。
「今、過去や未来のことで悩んでいたり、考えていることってある?」
「えっ……?」
ふいに時間屋は真剣な目をして私に聞いた。
「ど、どうしてそんなこと聞くの?」
「だってほら、時計がアヤカに反応して光ってる」
見れば懐中時計は私の手の中で、淡い光をこぼしていた。その青いきらめきに、時間屋の顔が明るく照らされる。
「この時計の力を必要としているものは、この時計に必ず引き寄せられるんだ。アヤカが僕らの店を訪れたのだって、偶然じゃないよ」
そうなのだろうか。本当に、この少年は本当のことを言っているのだろうか。
九官鳥のハルが、私にこう告げた。
「時計の光は、あなたが過去か、未来へ行きたいと願っている証拠です。今、旦那様と二人でこの時計に手をかざし、旦那様が力を開放すれば、あなたはあなた自身の過去、あるいは未来へ行くことができます」
最初のコメントを投稿しよう!