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時間屋が説明を引き継ぐ。
「でも、時空を超える代償に、お客には何かを支払ってもらわなくちゃならないんだ。いわゆる対価だよ。それはお客の大切にしているものだったり、思い出の品だったり、あるいはそのお客にしか出せないものだったり。そのときどきで僕らが決めるんだけど、それでもいいかい?」
私は輝く時計を見つめて押し黙った。
考えたこともなかったけれど、過去に行けるのなら、やりなおしたいことがある。会いたい人がいる。
もし、すべてやりなおせるのなら。
「決めるのは君しだいだ。アヤカ、どうする?」
私は時計から目を上げ、時間屋の目をまっすぐ見て言った。
「やってみる」
突然、時計から大量の青い光が洪水のようにこぼれだし、部屋中が明るくなった。私は思わず声を上げる。光の帯は体中をを瞬く間に包んでいった。
「そうと決まれば出発だ! ハル、行くよ!」
「おおせのままに」
コート掛けからひょいとシルクハットを取り、上着を羽織ると、時間屋は私の手の上の懐中時計にその小さな手をかざした。ばさばさとハルが飛んできて、彼の肩の上に乗る。
時間屋が何かをつぶやいた、と思った瞬間。
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