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「今どき別荘の管理会社との連絡は電話やメールだし、鍵の受け渡しで会うのも受付の人間だけだ。鍵屋と管理会社の人間が同一人物とは気づかれない。大量の別荘を一社で管理する管理方法を利用した犯罪だな」
草鞋はもう片方の麦茶をぐいとあおった。
「それにしても、あれだけの情報でよく警察が動いてくれましたね」
奈津子が麦茶を受け取って言う。
「動いたと言ってもたいした手間じゃないからね。管理会社に、別荘の鍵が壊れていたら鍵屋に連絡する前に警察に届けるよう、利用者に伝えてくれと言ってもらっただけだから」
「なるほど」
奈津子は頷く。
「ま、手間を惜しんではいけないということだ」
麦茶を机に置き、草鞋は偉そうに腕を組む。そこへ、何の前触れもなく事務所のドアが開き、巡の声が響いた。
「っはよ~ございま~す。また鍵掛かってませんよ。不用心な」
奈津子が噴出した。
(おわり)
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