幼馴染

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 小さい頃。隣の家には天使が住んでいました。  天使はどんな女の子より愛らしく、可憐な男の子でした。  砂場で団子を作る丸まった背中。追いかけっこで追い詰められると一歩も動けなくなってしまう足。逆上がりができなくて下がった眉毛。潤んだ瞳。そのどれもが美しかった。  ちょっとの衝撃で消えてしまいそうな彼に、子供心ながら「私が守ってあげなくちゃ!」と無駄に背筋を伸ばしていた自分を覚えている。  そんな天使との別れはある日突然やってきた。 『ぼ、ぼく、やだ。い、いっかちゃんと会えなくなるの、やだあ』  ピンク色のマシュマロの上を滑り落ちていく大粒の涙は周囲を困らせた。  天使は海を越えた遥か向こうの異国に行くのだと聞かされ、もちろん動揺もしていたけれど、泣いている彼を目の前にしたらやっぱり背筋が伸びる。 『手紙も書くし、また絶対会えるから。だから泣かないの!』 『……ほんと?』 『うん。絶対!』  寂しい悲しい気持ちを必死に引っ込め笑顔を見せると、天使は涙を溜めた瞳を一度きゅるんと丸くした後、袖を引っ張り瞼を擦って言った。 『帰ってきたら――……』 『――……てたらね』  小指を絡め指切りを交わし、手を振り見送った。
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