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これは神様からの罰だったのかもしれない。
「あ、皐月。こっち。中庭抜けちゃった方が早い」
先輩、やきもち妬いてくれるかな、なんて。一瞬でも皐月を利用しようと考えたこと。
「へ~。こんなとこあるんだ」
「意外と中庭って奥まで行くことないよね……」
杉先輩の気持ちを、無視したこと。
『ショッピングモールに新しく入った雑貨屋さんに行きたいです』
『あ~、そういえばそんなこと言ってたような』
先週の放課後。デートで先輩が何気なく溢した一言。
――『誰に聞いたんですか?』そう聞いたら先輩はなんて答えただろう。聞くのが怖くて結局気付かないふりをした汚い自分。
「……あ」
わかっていた。いつかこうなることはわかっていたじゃないか。
「いちか?」
突然立ち止まったいちかに皐月は怪訝な顔で彼女が向ける視線の先を辿る。
そこには誰かを抱きしめる杉先輩がいた。
恋愛に正解や間違いなんて存在しない。
もしあるとしたらその人が『良し』としたものが正解で、『無し』としたものが間違いだ。
付き合っている人がいるとわかっていても彼女を諦められない皐月も。好きな人と付き合っているいちかも。また、正解であり間違いなのかもしれない。だって――。
「花咲……」
――人の気持ちは変わる。そうでしょう?
顔を上げた杉先輩の腕の中でゆるく巻かれた栗色の髪が風に乗って、静かに揺れた。
――先輩。やっぱり私じゃ駄目だった?
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