幼馴染

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 普段は絶対買わないであろうちょっとお高めなザラメ入りのそれに、皐月の来訪を楽しみにしていたことが窺えた。  鼻歌でも歌いだしてしまいそうな勢いの母に、いちかは次第に冷静さを取り戻していく。 「ま、いけない! カステラには紅茶よね。すぐ淹れてくるから待っててね」 「あの、もしよかったらこれ」 「まあまあまあ! ありがとう! そうよね。イギリスは紅茶の国だものね。でもいいのかしら、こんな……」 「お嫌いでなければ。母も喜びますし」 「申し訳ないわ~。後でお礼のお電話入れなくちゃ」  恐縮しながらもやっぱり嬉しそうな様子で母が受け取った皐月からのイギリス土産は、Fから始まる王室御用達で有名なブランドものの紅茶だった。少し神秘さを感じさせる空色のパッケージは品の良さを醸し出している。 (ふふ。すっごく嬉しそう)  スリッパの音を弾ませて、再びキッチンへと向かう母の後ろ姿につられ、自然といちかの表情も柔らかくなる。 「なあ。いつまでそこに突っ立ってるつもりだよ」 「…………」 「座れば?」  数秒前まで紅茶と同じくらい品の良い笑顔とバイオリンを奏でるような優雅な声と口調はどこへやら。いちかの耳に再び入ってきた皐月の声は低くつんけんしたものだった。 (もしかして) 「反抗期?」 「…………」  思ったことをそのまま発したいちかの言葉に、今度は皐月が黙り、口をぽっかりと開けている。  皐月は一度思い切りため息をついてから無言でいちかの腕を掴み引っ張った。 「きゃっ!」
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