相手が誰であろうとも。

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相手が誰であろうとも。

「書き直し命令が発動された。」 「………は?」 作業していた全員が手を止めて顔を上げた。その先にいたのは、苦渋の表情を浮かべた、我がクラスの実行委員長。 「…菱山。マジか。」 「…マジだ。」 そう言って彼が、ばさっ、っと教卓の上に投げたのは、我がクラスが文化祭で披露しようとしていた、演劇の台本。 「…!ちょ…、ちょっと、」 「ひでぇ………」 我らがクラス一丸となり案を出し合い、時に意見を戦わせ、時に衝突し、時に殴り合い、時に家に帰って昼寝をし、時に垂直落下式なんちゃらを繰り出し合い、そうして完成させた、我らクラスの全身全霊を込めた台本である。つまり、この台本は我がクラスそのものである。魂である。墓標である。悪党には不要なのである。 そんな台本が、 見るも無惨な赤ペンによる修正まみれの姿になっていた。
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