8人が本棚に入れています
本棚に追加
しかし、相手に引かれたからと言ってなんだというのか。
そっちが引くのなら、むしろこちらは押せ押せで攻めるべき。そう、一度獲物に食らいついたら決して離さぬ人食いワニのように。
「きっとわたくしなら、ルルのお役に立つことができますわ! 是非ともわたくしを協力者に!」
「ま、まあそこまで言うのなら……こっちとしては願ったりだけど。妖精とか魔法の話をしても、あまり動揺していないみたいだし」
「いつかこういうことが起こった時のためにと、脳内シミュレーションは万を超える数をこなしてきましたわ!」
「変な子に見つかっちゃったかなぁ……」
変な子とは失礼な。わたくしはごく普通の小学生だというのに。
なにやら妖精さん……ルルの表情は不安げに曇っているように見えるけど、それはきっとわたくしのせいではないはず。たぶん。
「自己紹介が遅れましたわね。わたくしは森杉天子……テンコとお呼びくださいまし」
「テンコ……か。うん、それじゃあ、これからはテンコのところで厄介になるよ。よろしくね」
ここまでは怖いくらい順調に話が進んでいく。
このままいけば、きっと魔法少女に変身できる時も近い……!
「あ……チャイムが鳴ってしまいましたわ」
「そっか、ここは学校なんだね。じゃあテンコ、私は外で待ってるから授業に……」
もう休み時間が終わってしまった。やはり楽しい時間はずいぶん短いように感じる。
さあ、早く教室に戻らないと。
「……降りられませんわー! 高くて怖いですの!」
「ええーッ!?」
そういえば、今わたくしは木の上にいるのだった。
さっきまでは夢中で気にならなかったけれど、いざ降りようと下を見てみると結構な高さ。活動的な方とは言い難いわたくしにとって、足のすくむ高所だったのだ。
「あー、もう完全に授業は遅刻ですの! でも怖くて降りられないですのー! ルルーっ、なんとかしてぇーっ!」
「早速ものすごく頼りにならなそうな姿を見せてくれるねキミは! もう、こうなったら一足早いけど、魔法の力を授けるしか……!」
キタコレ! 思わぬハプニングに見舞われはしたけども、災い転じてなんとやら!
まさか出会って5分で魔法少女に変身できるチャンスがやってくるなんて!
「ええ、やってくださいまし! ルルっ!」
「なんでそんなに嬉しそうなんだいキミは!? 遅刻してるってことわかってるの!?」
最初のコメントを投稿しよう!