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ルルはなにやら呪文のようなものを唱え、わたくしに両手を向けている。すると不思議なことに、体の奥底から力が湧き上がってくるような感覚が流れ込んできたのだ。
「私の魔法、テンコに授けたよ! さあ、強く願って! 自分の気持ちを魔法に変えるイメージを!」
「言われずともですわ! 魔法少女テンコ、華麗に爆誕といきますわよ~っ!」
カッ、と目の前に桜色の光が広がった。
まるで無重力のような桜色の空間で、わたくしの体は光に包まれる。
ああ、なんという解放感! 体がみるみる軽くなっていくのを感じ、最初に足、次に右手、左手と魔法の衣装が装着されていく。
フリルのたくさんついたスカート、白とピンクの上着……ツインテールを結ぶリボンまで。最後にぴょこんと立った純白のうさみみが生えて、変身完了!
「うわぁぁ……本当に変身できましたの!」
「これぞ魔法少女、って感じだね。テンコ、魔法の才能あるんじゃない?」
「マジですの!? うれしいですわ!」
ルルの言うことが本当ならば、わたくしが魔法少女として活躍するのは約束されたも同然。
それは喜ぶのも当然で、思わずぴょんと跳び上がった。
「……って、うああああ!? た、たっけぇーですのー!? 軽く跳ねただけのつもりでしたのにぃー! でも、自分の力を制御できずに上空までジャンプしてパニックになるっていう定番をこの身で体感できて嬉しいですわーー!」
「怖がったり喜んだり忙しい子だ……そしてたくましいね、テンコは」
すごい高さまで一瞬で到達。わたくしたちの住むこの間深市を一望だ。人が豆粒みたいに見える。
しかし好都合。このまま落下点を調節して、学校の屋上へ着地してしまおう。
「……けどやっぱり怖い! わたくし、フリーフォールは大の苦手なんですの~っ!」
「テンコ、落ち着いて! 私たちの魔法は思いの力! 自分がちゃんと着地している姿をしっかりイメージして!」
「そそそそ、そんなこと言われましても~っ!」
流石のわたくしも、こんな上空から着地するイメージトレーニングはしていない。
でもやらなきゃ死んじゃう! あ、そうだ、お兄ちゃまが見ていた映画では、確かこう……!
右の拳と膝を屋上のコンクリートに着けて衝撃を和らげ、着地に成功。
「できましたわー!」
「魔法少女っていうか、スーパーヒーローみたいな着地だったね……」
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