運命の歯車は、突然回り出す

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ぴぴぴぴぴ! わたくしの枕元で、けたたましく目覚まし時計のアラームが鳴り響く。 自分でこの時間にセットしたとはいえ、このアラーム音はどうしてもうらめしい。あと五分だけでいいから寝かせてほしいのに。 けれど、そう甘えたことも言っていられない。わたくしは手探りで目覚まし時計を探り当て、少々乱暴にアラームを止めた。 「ふぁぁ……今日もいいお天気ですの」 眠気とだるさが後を引く体にムチを打ち、わたくしは上半身を起こす。カーテンの隙間から漏れ出る朝陽が眩しくてあたたかい。 そのカーテンを開け、窓も全開にして、朝一番の風を全身に浴びる。外の空気を感じることで、心身を目覚めさせるのが、わたくしの日課だ。 それからお手洗いを済まし、洗面所で顔を洗って歯を磨いたら、また部屋へ戻ってきて、わたくしの通う私立汪眞大学附属小学校の指定制服に着替える。 「……リボンよーし、スカートよーし、袖も襟もぜんぶよーし! 今日も完璧ですわ!」 着替え終わると、姿見の前で自分の身なりをチェックすることを忘れない。 学校指定のセーラーブレザーに乱れもなく、肩にかかるツインテールも左右のバランスばっちり。 これで朝の支度は全て完了。昨晩のうちに椅子の上に用意していた学習鞄を手に取ると、わたくしは優雅に階段を降りる。 「くんくん……このかおりは目玉焼きですの!」 鼻腔をくすぐる卵の焼き上がるにおいを感じながら、わたくしはダイニングキッチンへと続く扉を開ける。 調理台の方へ目を向けると、エプロンをつけたわたくしのお兄ちゃまが、まさに卵をお皿に載せる真っ最中だった。 「おはようございますですわ、クロお兄ちゃま!」 「おはよう、テンコ。ちょうど朝ごはんできたぞ」 「存じておりますわ!」 わたくしに笑顔を向けるこの方は、玖琅人(クロード)お兄ちゃま。 両親が不在のことが多い我が森杉家で、ほとんどの家事を担当してくれている屋台骨なの。 しっかり者だけど、自分の名前が当て字っぽいことを気にしたりしているごくごく普通に思春期盛りの中学三年生ですわ。 「テンコ、悪いんだが姉ちゃんを起こしてきてくれないか。その間に朝食の用意終わらせとくからさ」 「はーい! ですわ!」 クロお兄ちゃまのお願い事は聞かないわけにはいきません。 わたくしは元気よく返事をして、お姉ちゃまの寝室のある二階へと、階段を駆け上っていった。
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