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「お姉ちゃま! 朝でございますわよ! 起きてくださいまし!」
二階にあるお姉ちゃまのお部屋は、いつも鍵はかかっていないので、ためらいなく扉を開ける。
しかし、ただ大声で呼びかけただけでは、お姉ちゃまが起きないことは周知の事実。案の定効果はまるでなく、頭まですっぽり布団を被って未だに夢の中。
やはり、今日もアレを使うしかないようだ。
「お姉ちゃま~~っ! 朝ごはんが冷めてしまいますわよ~~っ!」
「ごっふぅお!?」
助走をつけてのヒップドロップ。これをお腹にもろに当てれば……というより、このくらいやらないとお姉ちゃまは目を覚まさない。
激しく咳き込みながら、ようやくお姉ちゃま起床。森杉家の朝は騒がしいのですわ。
「おはようございます、お姉ちゃま!」
「て、テンコか……おはよう。でも次からはもっと優しく起こしてくれると、姉ちゃん嬉しいな……?」
「それは土台無理な相談ですわー!」
だって起きないじゃないですか。
お腹をさすりながらゆっくりと上半身を起こしたお姉ちゃまに、わたくしは笑顔でその提案を拒む。
背中まで伸びた長い髪は、寝癖でぼさぼさ。お外に出るのをあまり好まないせいか、肌も白いというより青白く、体の線も細い。
そんなぐうたらで不健康な森杉家の長女、高校二年生の真央(マオ)お姉ちゃまはがっくりと項垂れてしまったけれど、是非もないですわ。
「はぁ……じゃあテンコ、先戻ってていいぞ。姉ちゃんもすぐ行くって、クロのやつに伝えといてくれ」
「わっかりましたのですわ!」
「……朝から元気なやつだなぁ」
わたくしはお姉ちゃまからの言伝を預かり、部屋を飛び出した。お兄ちゃまの待つダイニングへと戻るために。
本日二度めの階段下りは、軽快なステップで。お腹も空いたし、早くトーストにかぶりつきたい気持ちが抑えられないからだ。
ダイニングに戻ってくると、宣言通りに朝食の準備はできており、テーブルの上にはお料理がきれいに並べられていた。
いつもの席で座って待つお兄ちゃまが、笑顔で私を出迎えてくれる。
「いつも悪いな、わざわざ起こしにいってくれて」
「お姉ちゃまの目覚まし係は森杉家末っ子の役割ですわ! このくらいお安い御用ですの!」
お兄ちゃまに労われると、ついつい頬が緩んでしまう。
それに、いつもお兄ちゃまは家事を頑張っているのだから、わたくしにできることはどんどん手伝ってあげたいんですの。
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