運命の歯車は、突然回り出す

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わたくしも早速席に着いて、お姉ちゃまの到着を待つ。 だいたい3分くらいの待ち時間で、制服姿のお姉ちゃまがダイニングに降りてくる。 「うぃーす……腹減ったぁー」 「遅い! ほら早く席つけ!」 目をこすりながら、ふらふらと歩いてくるお姉ちゃまを、お兄ちゃまが厳しく一喝。 お兄ちゃまとお姉ちゃまは性格が正反対だから、よく衝突するけれど、基本的にはわたくし含めてとっても仲良しきょうだいなのですわ。 「ってか寝癖直ってないし、タイも曲がってるし! そんなんでどうすんだよ!」 「いちいちうっせーなぁクロは……学校でミユキに直してもらうから大丈夫だって」 たまにどちらが歳上なのかわからなくなる時もあるけれど、それも含めて我が森杉家。 気だるそうにお姉ちゃまが席に着くと、僭越ながら森杉家末っ子のわたくしが食事の音頭を取る。これもわたくしのお仕事の一つ。 「それでは、冷めないうちにいただきますですわ!」 「いただきます」 「いただきまーす」 全員で手を合わせて、この挨拶をしてから食べ始めるのが森杉家のルール。 今日もお兄ちゃまの作ったごはんはとても美味しい。朝からいくらでも胃に収められそうだ。 「そういえば今更なんだが、テンコのその口調……もう五年生なんだし、直した方が」 「無理ですの! もうこの喋り方がクセになってしまいましたわ!」 たまーに、お兄ちゃまからこの口調のことを注意されるけれど、わたくしに直す気はさらさらない。 そもそもきっかけは、わたくしがちいさい頃に見たアニメの影響でお姫様になりたいと言い出して……まずは形からと始めたのがこの口調。 おかげでお姫様口調がこの歳になっても抜けないでいる。口に出すと、自然とそういう喋りになってしまう。 クラスの友達も、わたくしをそういうキャラとして見ている節があるし、今更元に戻しにくいというのもあるけれど。 「ま、いいじゃねーか。テンコはテンコだ。テンコがどんな風になろうが、私はずーっとテンコの姉ちゃんだからな」 「はいっ! わたくし、森杉天子は、いつまでも森杉真央お姉ちゃまと森杉玖琅人お兄ちゃまの妹ですのよ!」 お姉ちゃまが、にかっと笑いながらわたくしの頭を撫でてくれる。 そう、お姉ちゃまは……もちろんお兄ちゃまも、いつもわたくしの味方でいてくれる。 だからわたくしは、いつだって堂々とわたくしらしく振る舞えますの。
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