8人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
メイとおしゃべりする内容は、日によってさまざま。昨日見たテレビ番組や、宿題が難しかったこと、家族のことなどもよく話題に上がる。
他愛ない会話だけれど、そんな時間がわたくしたちにとってはすごく楽しくて、あっという間に教室に着いてしまう。
「おっはよー! テンコ、メイー!」
「おはようございますですわ、サチ!」
「サチ、おはよう」
わたくしたちより一足先に教室に着いて、出迎えてくれたのは、お友達の笛吹紗智(サチ)外にハネたくせっ毛が特徴のムードメーカー。
いつもは遅刻ギリギリで登校してくるサチがこんなに早く……と思っていたら、どうやら日直だったようで。与えられた仕事はきっちりこなすいい子だ。
「ねぇねぇ聞いてよ、昨日お姉ちゃんがさー!」
「うん、なになに?」
サチはいつもニコニコ、とてもおしゃべり上手で場を盛り上げるのが得意な女の子。
そしてそれをいつも楽しそうに聞き役に徹しているのがメイ。メイは逆に聞き上手だ。
わたくしは……どっちつかず。しかしよく言えばオールラウンダータイプとも取れるし、決して悪いことではないと自分では思っている。つもり。
「あ、テンコ、サチ。先生、きたよ」
「ほんとだ。じゃあ続きは休み時間に話すね!」
「ええ、楽しみにしていますわ」
会話が盛り上がりすぎても、うまくメイがその場をおさめてくれるから安心。
先生が教室に入ってきたのを見て、わたくしたちだけではなく、クラスのみんなが席に着く。そして、静かになったのを見計らって、先生がホームルームを開始した。
「みんなー、おっはよー! 今日もホームルームはっじめっるよー!」
「あれぇ? ルミ先生なんだかすげー機嫌いいね? 新婚の旦那さんといいことあった?」
「きゃー! 笛吹さんたら鋭い~! 実は昨日旦那と~……」
ああ、また始まった。新婚1ヶ月、我らが担任鷺宮瑠美(ルミ)先生ののろけ話が。
これさえなければ、若くて綺麗で優しくて、授業もわかりやすい完璧な先生なのに。人間誰しも、何かしらの欠点があるということか。
「サチもわざわざ焚き付けないでくださいまし……」
こうなるとルミ先生が満足するまで止まらないので、わたくしは諦めて窓の外を眺めながら、思わずため息が一つ。
結局のろけ話は、1時間目の授業が始まるチャイムが鳴るまで終わらなかった。
最初のコメントを投稿しよう!