運命の歯車は、突然回り出す

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メイとおしゃべりする内容は、日によってさまざま。昨日見たテレビ番組や、宿題が難しかったこと、家族のことなどもよく話題に上がる。 他愛ない会話だけれど、そんな時間がわたくしたちにとってはすごく楽しくて、あっという間に教室に着いてしまう。 「おっはよー! テンコ、メイー!」 「おはようございますですわ、サチ!」 「サチ、おはよう」 わたくしたちより一足先に教室に着いて、出迎えてくれたのは、お友達の笛吹紗智(サチ)外にハネたくせっ毛が特徴のムードメーカー。 いつもは遅刻ギリギリで登校してくるサチがこんなに早く……と思っていたら、どうやら日直だったようで。与えられた仕事はきっちりこなすいい子だ。 「ねぇねぇ聞いてよ、昨日お姉ちゃんがさー!」 「うん、なになに?」 サチはいつもニコニコ、とてもおしゃべり上手で場を盛り上げるのが得意な女の子。 そしてそれをいつも楽しそうに聞き役に徹しているのがメイ。メイは逆に聞き上手だ。 わたくしは……どっちつかず。しかしよく言えばオールラウンダータイプとも取れるし、決して悪いことではないと自分では思っている。つもり。 「あ、テンコ、サチ。先生、きたよ」 「ほんとだ。じゃあ続きは休み時間に話すね!」 「ええ、楽しみにしていますわ」 会話が盛り上がりすぎても、うまくメイがその場をおさめてくれるから安心。 先生が教室に入ってきたのを見て、わたくしたちだけではなく、クラスのみんなが席に着く。そして、静かになったのを見計らって、先生がホームルームを開始した。 「みんなー、おっはよー! 今日もホームルームはっじめっるよー!」 「あれぇ? ルミ先生なんだかすげー機嫌いいね? 新婚の旦那さんといいことあった?」 「きゃー! 笛吹さんたら鋭い~! 実は昨日旦那と~……」 ああ、また始まった。新婚1ヶ月、我らが担任鷺宮瑠美(ルミ)先生ののろけ話が。 これさえなければ、若くて綺麗で優しくて、授業もわかりやすい完璧な先生なのに。人間誰しも、何かしらの欠点があるということか。 「サチもわざわざ焚き付けないでくださいまし……」 こうなるとルミ先生が満足するまで止まらないので、わたくしは諦めて窓の外を眺めながら、思わずため息が一つ。 結局のろけ話は、1時間目の授業が始まるチャイムが鳴るまで終わらなかった。
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