運命の歯車は、突然回り出す

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休み時間開始のチャイムが鳴ると同時に、わたくしは席を立ち駆け出した。目的はもちろん、校庭に落ちたきらきらの正体を確かめるため。 しかし、いつも休み時間を共に過ごす、友達のメイとサチの二人に呼び止められてしまった。 「テンコ、どこ、いくの?」 「えっと、校庭にハンカチを落としたかもしれなくて……」 「だったらわたしも探すの手伝うよー!」 「お構いなく! すぐに戻ってきますのでして!」 流石に、この言い訳は苦しかったかな。 友達二人に嘘をつくのは心苦しいけれど、なんとなくこのことは他の誰かに知られてはいけない気がした。 ……自分だけが知っているという優越感に浸りたいだけなのかもしれない。そう考えると、自分が嫌になってしまうけれど。 「確か、この辺に……」 校庭にやってきたわたくしは、きらきらが消えたと思わしい地点を重点的に捜索した。 けれどそう簡単には見つかるはずがなく。 「おかしいですわね……この木の辺りに落ちたと思いましたのに」 木の下まで行っても、それらしきものは見当たらず。やっぱりただの見間違いだったのか……冷静に考えて、光りながら不規則に落下する物体なんてあるはずないし。 きらきらが見つからなかったのは少し残念だったけど、これで魔法少女なんていう夢を諦めるいいきっかけになったかもしれない。 魔法なんてこの世にはなくて、お話の中だけのこと。そんなこと、頭の中ではわかっていたはずなのに。 けどこれでもうおしまい。わたくしは、きっとこれからも普通の道を歩いていくんだ。 そう考え至り、踵を返したその瞬間に、きらりと光る何かが視界に映り込んだ。 「……! この木の上……!」 つい1秒前まで諦めたとか思っていたはずなのに、なんと都合の良い思考回路をしているんだろう。 それでもわたくしは体が動くのを止められなかった。木登りは苦手だけど、ゆっくりとそのきらきらの元へ、確実に近づいていく。 「ふぐぐ……あと少し……!」 ようやくお尻を乗せて休めそうなところまで登り切る。すると、きらきらはもうすぐ目の前にあった。 よく目を凝らして見てみると、それは昆虫の羽根のようなものを6枚背中に生やした、小さな人間のような姿で……。 「……も、もしかして、妖精さんですの!?」 わたくしには、そうとしか思えなかったのだ。
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