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画面の向こう
ぐにゃりと音をたてるように、世界の輪郭がゆがんだ気がした。ずっとブルーライトを浴びていたせいだろうか。人工的な紫外線は、わたしの体内を容赦なく狂わせる。それとも、やっぱり、夜通しスマホを見つめていたことが原因だろうか。
だって、仕方ない。開いたままの眩しい画面で、返事のない「ごめんなさい」の文字が、ちかちかとわたしを急き立てる。届いてしまった言葉を取り消せないのは、インターネットもリアルも一緒だ。けれど、目に見えて残る後悔は、現実の傷よりずっと痛々しかった。治る前のかさぶたを、はがすどころか爪で何度もえぐるように。わたしは乱雑に画面を消した。
一人暮らしのアパートで、ただただ悲しみに浸っていると、わたしの表面が、ふやけてぽろぽろ剥がれ落ちていく感じがする。それで世界の冷たい部分と、露出したわたしの内側が、じっとりと重なりあっている。
気づくと部屋は、わたしから排出された悲しみでいっぱいになっていた。どろりとした青黒い感情で、ベッドの他はすでに水没してしまったようだ。
このままでは溺れてしまう。寝具の孤島に取り残されたわたしは、ようやく脱出を試みた。
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