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俺も、逃げるかなたにつきあって追いかける。
ったく、こうして見るとやっぱり無邪気な一年生だよな。
「キャッ!」
「!?」
前でかなたの驚く声が聞こえた。
見ると、かなたはちょうど柔道場の扉を開けた三人組の制服の男子のうちのひとりにぶつかって倒れていた。
「大丈夫?」
かなたに手を差し出す男子。
肩に触れるくらいの長いサラサラの黒髪。
二年では見たことないな。
あの身長だと三年だろうか?
「す、すみません。あっ!」
差し出された手を掴もうとしたかなたの動きが止まった。
「久しぶりだね、一之瀬」
「か、片倉先輩……」
「オイ、俺達のこともちゃんと覚えてるか? サボリ魔」
片倉先輩と呼ばれた男子の右に居た内のひとりがかなたを見下ろして言った。
短い髪をハードジェルかなにかで逆立てている。
左のヤツはスキンヘッドだ。
「は、はい、お久しぶりです。楯岡先輩、小山田(おやまだ)先輩」
かなたは、ウニ毛とスキンヘッドに交互に挨拶した。
その怯えながら挨拶するかなたの顔はどう見ても、憧れの先輩を見る表情とはほど遠いものだ。
「オイ一之瀬ぇ~、お前、剣道部辞めて今度は柔道部のマネージャーにでもなるつもりか~?」
スキンヘッドの男子、小山田が言った。
「つーかこいつらここでお楽しみ中だったんじゃね」
小山田がニヤニヤしながら俺とかなたを交互に見た。
「いや、これはそう言うんじゃなくて――」
「じゃあ、どーゆーんだよ!」
《グフッ!》
俺が説明しようとした時、楯岡のパンチが俺の腹をエグった。
「ウッ!」
「先輩っ!」
油断してた。
小山田に気を取られて……。
「ちょっと来なよ」
片倉が、表情は柔らかいけど、絶対にNOと言わせない強い口調で俺達に向かって手招きをした。
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