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だが、画面の揺れが止まった途端、その異様な光景に俺は目を剥き、息を呑んだ。
いる。
先ほどまで男子生徒しかいなかったはずなのに、女子生徒が一人増えている。
勿論扉が開いた様子もないし、そもそもこの部屋には男しかいなかったはずだ。
「もっとアップしてください」
呆然としていると、宮野先輩がヒビトに指示を出した。
ヒビトは嫌々言いながらも先輩の言う通りに映し出された女子生徒の部分をトリミングし、画面をズームさせる。
"ドーメキ"の解像度がいいのか、ズームをしても女子生徒の画像は粗くなることはなく、顔まではっきりと見えた。
切り揃えられた前髪に、黒色のショートボブの少女だった。
ただ、うちの学校の制服を着ているかと思ったら胸元のリボンだけは赤い。
この少女は一体誰なのだ。
しかし画面を切り替えた時にはもう彼女の姿はなかった。
ほんの数秒の間で彼女は消えたのだ。
ただ、何かの存在は感じたのか、近くにいた男子生徒たちはガバッと彼女がいたほうへと振り向き、「何かいた!」と一斉に騒ぎ始める。
宮野先輩は「やはり」と満足そうに頷きながら流れるように手帳に何かを書き出す。
「ヒビトさん。さっきの映像、もう一度見せてください」
「人使い荒い先輩だなあ……金取るぞ」
ヒビトは宮野先輩にぶつぶつ言いながらそれでもパソコンのキーボードを打ち込む。
画面には先ほどのアップされた少女の映像が映し出された。
けれどもあんな瞬間的に少女が現れたり消えたりすることがあるはずない。
ということは、つまり、あの子は……
映し出された映像にぞっとしていると、隣にいたアマネが核心を突くようにそっと告げた。
「霊体だから、たまたま電子機器に干渉したんでしょうね」
「霊体……だって?」
確認するように聞き返すと、アマネは静かに笑いながら画面を見上げていた。
そして、アマネは俺だけに聞こえるように耳元ではっきりとこう言ったのだ。
「見えたかしら安平君。彼女が君の会いたがっていた……"厠の神"よ」
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