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――初めての全国大会。
先輩たちが一丸となって確実に点を決めていく。
一回戦は接戦の末に見事に勝ち取り、俺たちはさらに注目されていた。
このままなら、もしかして優勝もできるかもしれない。
コートに立つ先輩たちの活躍を見ながら、俺はそんな期待もしていた。
1年生らしい、馬鹿げた期待だった。
来たる2回戦目は去年の優勝校だったというのに。
圧倒的だった。
サーブの角度がえぐいし、スパイクのパワーだってまるで雷が落ちたようにコートに刺さる。
見事なコンビネーションと素早いボールさばきで、反応すらできない時もあった。
そして瞬く間に点が取られ、何もできないまま相手側のマッチポイントとなった。
2セット先取されての、5対24。
奇跡でも起きない限りこの点数差を覆すことはできない。
「ここまでか」
俺たちの試合を見ていた誰もがそう思っていたはずだ。
それでも俺は諦めなかった。
ここで終わったら、先輩たちも、俺の試合も終わってしまう。
せっかく手に入れたチャンスを易々と逃してたまるか。
そんな闘志が俺の中でメラメラと燃えていた。
鳴るホイッスルと共に、相手がサーブを打つ。
サーブを目で追った途端、ボールは天高く飛んだ。
先輩が必死に腕を伸ばして、相手のサーブを受けたのだ。
だが、触れることで精いっぱいで当たりどころが悪かったのか、三段攻撃する間もなくボールは相手コートに飛んだ。
相手のチャンスボールだった。
すぐさま相手側のトスが上がり、相手のアタッカーが高くジャンプした。
こちらもブロックのために飛んだが、選手の身長の高さも相まってまったく意味を成していない。
――あ、終わった。
先輩たちのそんな心の声が聞こえた気がした。
それでも、俺は諦めなかった。
ここで動かなければ一生後悔すると思った。
こんなところで終わらせたくない。
だから俺はボールに向かって腕を伸ばした。
「安平!!」
誰かが俺の名前を呼んだが、その声ももう届いていない。
それが俺の危機を察してだというのに。
ふと顔を上げると、目の前にボールがあった。
反射的に頭を避けたが、その瞬間に左耳に破裂音が聞こえた気がした。
それと同時に世界がぐるっと回り、視界が真っ白になった。
ただ、遠退く意識の中、ホイッスルの音だけがぼんやりと聞こえていた。
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