4:その目は逃さない。

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「だー! じれったいな!!」 いつまでももじもじとし、一向に話を振らないハナにじれったさを感じる。 「会話とかテキトウでいいじゃねえか! もういい、俺から訊く! 趣味は?」 「えっと……考えたこともないや」 「んじゃ、好きな芸能人」 「芸能人は、よくわからない」 「血液型は?」 「覚えてない」 「誕生日」 「忘れた……」 「好きな曲は?」 「曲は……空学の校歌しか知らない」 「全然会話になんねえじゃねぇか!!」 だめだ。 会話が盛り上がるどころか共通点すら見つからない。 いや、確かに神やら幽霊やらが昨今のアイドルとか詳しいのも嫌だけど、かといってこれはひど過ぎる。 「ハナって今まで友達いたのか?」 「え!?」 俺の問いにハナは驚いた声をあげる。 その動揺ぶりからどうやら図星らしい。 まあ、ここまで口下手だと友達を作るにも苦労しそうだが……なんだか哀れに見えてきた。 「といっても、俺も転校してきたばかりだから原くらいしか友達いねえんだけどさ」 「原?」 「俺とよく一緒にいる奴。ハナのことも最初はそいつから聞いたんだ」 「あ……もしかしていつも一緒にいる子? 不思議な子だよね。なんか、魂がいっぱい入り交じっている」 「へー。そんなことわかるんだな。でも、不思議な奴だけど悪い奴ではないよ。悪い人格はいるけど」 「わ、悪い人格って……」 悪戯っぽく言ってみると、ハナの戸惑った声が聞こえた。 半分冗談だったので、真に受けたハナのリアクションに思わず笑う。 「で、でも、いいなあ友達……」 「な、なんか切実だな……やめろよ、こっちが泣けてくる」 心の底から羨ましげに話すハナに俺も同情しそうになった。 「というかお前のこと視える奴いないのかよ」 「う、うん……あのペンギンは私のこと視えているみたいだけど……ペンギンだし」 視えはしないが、がっくりと肩を落とすハナが目に浮かんだ。 彼女いわく、ペンギンの他に自分の姿が視えるのはあの用務員さんらしい。 だが、あの用務員さんは全然名前を呼んでくれないし、たまにこっちを視てきても何も話かけてこないらしい。 「昔は私の名前を呼んでくれる人もいたけど、もう全然呼ばれなくなっちゃった……多分、私の名前を呼んだら物理干渉できることみんな知らないんじゃないかな。学校の怪談も都市伝説も……いつかみんな忘れられちゃうんだね」 そう言いながらハナはため息をついた。
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