好きな人

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「悪かった」  足が止まる。振り返ったのは瀬名さんがいる方。声からは躊躇いが消えている。 「すまん。大人げなかった」 「……え?」 「いい年してみっともねえな」  隣の存在を凝視した。そこには邪魔な仕切りがある。 「そっち行ってもいいか」  瞬きを一度。そっちは、こっちだ。俺の部屋。 「顔を見て話したい」 「……どうぞ」 「すぐ行く」  その直後には隣のベランダから窓の開閉音が聞こえてきた。すぐに行くって。瀬名さんがこっちに来る。鬱陶しい壁がなくなる。  俺も慌てて部屋に戻った。
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