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なんだかんだでその後はちょくちょく気を向かせることになった。お互いの休日で時間が合ったとき、昼メシとか、晩メシとか、行かねえかって誘われる。
和洋中は全て制覇済み。ファミレスだったのは最初のあの一回きりだ。俺一人ならば絶対に入らない、それなりにちゃんとしているような店で幾度となくご馳走された。
チープ過ぎない半面で堅苦しすぎる訳でもないからどの店もまた行きたくなる。出て来る料理も店の雰囲気も文句なしに全部いい。外さない男はこれだから嫌だ。モテる男とも言い換えられる。
「なんか瀬名さんっていちいち勝ち組感出してきますよね」
ごちそうさまのついでにイヤミを飛ばしてもこの男はノーダメージ。店のドアをさり気なく押さえて俺が外に出るのをスマートに待っている姿は妙にこなれている。なんかムカつく。
「不幸を味わった事とかなさそう」
「どんな偏見だそりゃ。こっちはお前より十四年も長く生きてんだぞ。世の中の辛苦を全て知り尽くしたとまでは言わねえがそれなりの不幸も経験してきた」
「たとえば?」
「終電間近の電車に乗るとだいたい止まる」
「不幸が地味です」
困るには困るが不幸ってほどの不幸じゃない。
「もっと本気度の高い不幸はないんですか」
「なぜ俺の不幸に興味を持つんだ」
「あんたを嘲笑うネタがほしい」
「お前は意外とそういう奴だよな」
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