食後のデザート

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 瀬名さんは俺の肩から手をどけない。それは答えろという意思表示。答えるまでは放してもらえないのだろう。俺がいつ瀬名さんを好きになったか、この人は聞きたがっている。  苦し紛れに俯くと、覗き込むようにして再び顔を近づけられた。 「なら聞き方を変える。あの写真はいつ撮った」  目を見開き、ついでにハッと視線も上がった。  あの写真。瀬名さんの。隠し撮りの、あれ。 「ッ見なかったことにするって……!」 「悪いな。いま一瞬だけ思い出した」 「っ……やっぱアンタ嫌いですッ」  震えそうな声で叫んだ。胸に手をついて押しやろうとするもこの人の体はビクともしない。  チクショウ。腹立つ。言わなきゃ良かった。好きだなんて。こんな男に。 「いつだ」 「うるさい」 「いつ」 「しつこいです」 「教えろよ。いいだろそれくらい」  それくらいじゃない。俺にとっては墓場まで抱え込んでいきたい重大事項だ。これを知られたらこれまでの言動が今度こそ一から覆される。  だがこの人は逃げる事を許してくれない。妥協に妥協を重ね続けてきたような男が今日だけは俺を逃がさなかった。  じっと真っ直ぐ見つめられる。蛇に睨まれたカエルはきっとこんな気持ちになるに違いない。もしくはライオンに追われるシマウマ。どっちだろうと別にいいけど、勝てる相手じゃないのは明らか。  だからおずおずと視線を外し、はぐらかすための微妙な答えを吐き出した。 「……涼しくなる前」 「正確に」  調子づきやがってこの野郎。苦々しい気分で睨み返したが、カエルごときに怯むような大人ならそもそもこうなっていない。
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