繁忙期の恋人

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「……明日は休みですか?」  明日は土曜だ。先週の瀬名さんは土曜の朝から会社に行った。それは今週も同様のようで。 「仕事」 「なんか冗談抜きで土曜も日曜もないですよね」 「寂しいか」 「全然」  ここの所はマグカップ一杯のお茶を二人で飲んで過ごす暇さえなかった。朝から晩まで働く大人が心配じゃないと言えば嘘になる。  だからせめて栄養失調が原因でぶっ倒れないように渡すのが昼飯用の弁当。それだけはきちんと食っているようだ。  腰には再び手を回される。こめかみの辺りに口づけてきた。湿り気の残った髪の上からそっと触れて、そのまま喋る。 「明後日は休めると思う」 「……そっか」 「という訳だから明日の夜は大量にカモミール摂取しとけ」 「お断りします」  人を安眠させてどうするつもりだ。
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