男同士のセンシティブな問題

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***  お泊まりは思わせ振りだと知ってもなお一緒に寝ている。  後ろから抱っこされて眠りに就くのももうお決まりだ。おかげさまでベッドの中はぬくぬくとあったかい。  右側は壁。左側に瀬名さん。だから毎晩右を向いて寝る。  目の前にはクマとカワウソ。抱き着かないけどこいつらも一緒だ。  カワウソの方はあれからずっとこの部屋に居候させている。くったりしたカワウソのことを瀬名さんは相変わらずウソ子と呼んでいた。  日中の自分の部屋には留守番のためにクマを置いておく。大学から帰って自宅のドアを開けてこいつがいるとちょっと落ち着く。  自宅からこっちへ移動する時にクマも一緒に連れて行くから、この二匹は毎日ここで感動の再会を果たしている。俺と瀬名さんと同じように、こいつらも寝る時は隣同士。  仲良くちょこんと並んでいるファンシーなクマと癒し系のカワウソ。  こう並べたのは俺だけど、イチャイチャ振りを見せつけてくるモフモフズに、なんかイラっと来た。 「…………」  舌打ちを寸前で堪えた。くっつきすぎだろ。人目をはばかれよ。  じっと見ているとイライラしてくるから今夜はぬいぐるみから目を背けた。ついでに瀬名さんの腕の中でごそごそと動き出す。俺を抱きしめるこの人の力は、それに合わせて少しだけ緩んだ。  いつもなら背中を向けて眠るが、今日は瀬名さんの方に向いて寝る。やや視線を上げるとそこでパチッと目が合った。すぐに逸らして、控えめにくっつく。 「どういうつもりだ」 「別に。寒いだけです」 「エアコンの設定温度上げるか?」 「上げたら八つ裂きにしてやります」 「難しいよな、お前はまったく」  半笑いで抱きしめてくる。寒いと言ったせいか、やわらかく抱かれた。 「こういうのなんて言うか知ってるか」 「……知らない」 「生殺しだ」 「じゃあいいですよ向こう向くから」  右側に向き直る前にガシッと腰を抱きとめられた。  クマとカワウソにも負けないくらいに、顔の距離は近い。今さら悔やむ。  元々そういう習慣なのか、お化け恐怖症のガキが一緒だからあえてこうしてくれているのか、どっちなのかは知らないけれども常夜灯は毎晩つけっぱなしだ。  ぬいぐるみ二匹のイチャイチャ加減がはっきり目に見えるのだから当然、ちょっとでも視線を上げてしまえば瀬名さんの顔も良く見える。  極力見ないようにした。俯きがちに抱きついてみる。モフモフカップルに距離感で勝利して謎の優越感に浸っていたら、ポンポンと軽く撫でられた背中。  ガキ扱い。仕方ないか。実際ガキだし。付き合い方もガキだし。 「まだ寒いか」 「……うん」  全然寒くない。適温だ。 「できれば真夏も寒がりでいろ」 「…………そうします」  どちらかというと暑がりなのだが夏はエアコンに頼ろうと決めた。
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