恋の悩み

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「……なんで俺と会わせた」 「ハルなら真面目だし、ちゃんとしてるだろうから。付き合ったら彼女大事にしそうじゃん」 「もし本当に俺がミキちゃんと付き合っちゃってたらどうすんだよ」 「良かったねって言うよそりゃ。ハルはミキの初恋だもん」 「はつこ……え?」  思わぬ一言。つい聞き返す。 「……初恋?」 「これ言ったのミキには内緒な」 「……今まで彼氏とか……」 「いないんだってば。意外だろ?」  かなり意外だ。寄ってくる男なんていくらでもいそうだけど。  可愛すぎると逆に彼氏ができないと言うのは都市伝説じゃなかったのか。  ミキちゃんは意外性の宝庫だ。実は昆虫オタクですとか言われてももう驚かない気がする。 「……さっきあの子に何か渡してたよな」 「ああ、チケット? サッカーの試合観たいってずっと言ってたから」  昆虫ではなくてサッカーだった。 「春休みに行こうって約束してたんだよ」 「お前も十分貢いでんじゃん」 「いやいや、これはもう恒例でさ。俺高校の時サッカー部で、あいつマネージャーだったんだ」 「……前から二人でよく行ってんの?」 「うん」  なんでミキちゃんはこいつと付き合わないんだろう。  見かけじゃ人は分からないのは十分理解したつもりだったが、まだまだ全然足りてなかった。能天気な奴だと思っていた浩太に、こんなにも真面目な悩みがあった。 「……俺はお前のこと誤解してたかもしれない」 「うん、だよね。知ってたよ」 「もっと軽薄なクズだと思ってた」 「ハルくん俺に当たり強すぎない?」  知り合ってから約一年。ここでこの話を聞いていなければ、今後も軽薄なクズという印象に変わりはなかったと思う。 「俺にゴメンねって思ってるなら次合コンやる時おいでよ。メンバーにハルが交ざってたら相手サイドの女の子たちのテンション確実に上がるから」 「行かねえよ。っつーかお前、ミキちゃんは」 「それはさぁ、まあ、ねえ。俺だって男の子だし」 「…………」  前言撤回。やっぱり軽薄なクズだった。 「ハルはあれでしょ。元気満タンの明るい子よりもおしとやか系とか清楚系が好きでしょ」 「知らない」 「照れんなって、俺に任せな。そういうタイプも集められるから」 「お前普段何やってんの」  軽薄なクズどころじゃない。最低じゃねえか。なんでそんな合コン慣れしてんだ。 「おいでって。楽しいよ」 「そういう勧誘には乗らないって決めてる」 「堅いなハルくん。ああ、それとも何。好きな子と進展でもあった?」 「…………」  ミキちゃんと言い、浩太と言い。なんなんだまったく。お前らこそもう付き合っちゃえよ。お似合いだよ。  何も言えずに目を逸らした俺のこの行動によって、浩太は確信に変えたようだ。 「へえ……なるほど。もしかして今その子と付き合ってる?」  子。って感じでは、全然ないけど。 「……悪いか」 「なんだよもう水臭い。そういうのちゃんと教えてってば」 「なんでお前に言わなきゃならねえんだ」  女子は浩太に相談するけど、俺はこいつには相談したくない。
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