一緒に晩飯どうですか。

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「……信用、なんですかね?」 「俺に聞くなよ」 「だって分かんねえし。ああ、でも……」  二人分の食事を作った。帰宅途中に寄ったスーパーで、いつもより多めに食材を買った。夕食に招くかどうかをあれこれと迷ったのは、身の危険があるかないかという考えが念頭にあったからではなくて、むしろそんな危機意識は頭の中のほんの片隅にでさえ存在していなかったと思う。  ただちょっと、気恥ずかしかった。今まで散々断ってきたから。  誘った時にこの人がどんな反応をするかと思うと気がかりで、けれど実際に誘ってみればぽかんと呆けてくれたから、危機感がどうのこうのというよりどちらかと言うと気分が良かった。 「あなたは酷い人じゃないと思う」 「…………」  そのせいだ。たとえ下心があったとしても瀬名さんは酷い事をする人じゃない。その確信が俺にはある。いつも食わせてもらっているからたまには何か返したい。そう思っていたのもあるから、今夜とうとう夕食に招いた。  感じたことを素直に言った俺を瀬名さんはしばらく黙って見ていた。さっきこの人の玄関先で見たような、ぽかんと呆けた顔ほどではない。  それでも少し意外そうで、あとはちょっと困ったような。なんとも言えない表情だ。いつもとはちょっとだけ違った顔のまま、瀬名さんは微かな溜め息を一つ。 「……参った。鉄壁のガードじゃねえか。そこまで信用されてるとさすがに裏切れない」 「そこまでって程の信用はきっとしてないですよ」 「はっきり言いやがって。お前も遠慮がなくなってきたな」 「なんか色々慣れたので」  ふっと、いつもはベランダの間仕切り越しに聞いている笑い声を耳にした。俺もそれにつられて笑った。その間にも絶えず感じていたのは、やわらかい眼差しだ。  見ていたくなる。そう思った原因は、この人の食事の所作が綺麗だから。決してそれだけではなかった。
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